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2014年 06月 15日
「Odyssey of Iska 1984」 33.マドリードへ 次の日は朝8時前に目が覚めた。 目覚まし時計より先に目が覚めるのは、まだ昨晩の緊張感が続いているからだろう。 支度をして隣の部屋のドアをノックした。ほどなくして女と赤ん坊も出てきた。 昨晩のマクドナルドとは違うマクドナルドに行って朝食を済ませた。 相変わらず何も食べる気がしない。ジュースだけ飲んだ。女と赤ん坊はきちんと食べた。 もちろんお金は私が払った。その代わり今日は活躍してもらわねば! 最初に日本領事館に行った。 領事館でパスポートを再発行してもらえるものだとばかり思っていたが、そうではなく、マドリードにある日本大使館に行かなければならないことがわかった。 領事はとても品の良いスペイン人の女性で、日本人はいなかったが、英語と日本語で話は通じた。領事は私の言うことにやさしく頷きながら、マドリードに電話をかけた。 大使が電話口に出たので受話器をくれた。 大使と話をした。日本人と日本語で話をするのは久しぶりだった。 私のように重要な物を丸ごと盗まれる例はよくあるらしく、これから私がすべきことを、まるでマニュアルを読むかのように淡々と早口で大使は説明した。 まず、明日金曜日の午前中にマドリードの大使館に来てパスポートの再発行の手続きをすること。そうでないと翌日から土日を挟むので再発行は遅れる。 再発行は日本とのやり取りも入れて通常2週間かかるが、所属する会社からそれを証明するテレックスを送ってもらえれば最短1週間で発行できる。 明日の午前中にマドリードに着くにはバルセロナを今日の夜行で発たなければならない。車中では寝るな。寝て身ぐるみ全てを剥がされパンツ一枚になった奴もいる。 パスポートやTCの再発行には警察署の発行した盗難調書とは別の正式な盗難証明書が必要なので必ずもらうこと。 お金を東京から送金してもらう場合は月曜日にそれを受け取るためには東京銀行のコレコレの番号に今日明日中に電子便で送る手続きをしろ。 帰りの航空券の再発行は大韓航空のパリ支店でやってくれる、などなど。 こうしたことを時にユーモアを交えながら澱みなく私に説明した。 領事館を出て、国際電話の掛けられる電話局に行った。 コレクトコールで家に電話した。 まだ、日本は早朝なので寝てるかと思ったが、お袋が出た。 さすがにこんなに朝早く、しかもコレクトコールで電話してくるので、ただならぬことがあったと感づいたのか、お袋の声のトーンが高い。 何があったの?何があったの?と、とてもうるさい。 いや、いや、大したことじゃないんだけど、ちょっと財布を盗まれちゃって。 悪いんだけど、東京銀行に行って、コレコレの番号に電子便で25万程僕の口座から降ろして送ってくれない? とまるで他人事のように俺俺詐欺まがいの話をお袋にする。 (私の声はどうやら独特らしく、名前を言わなくとも皆わかるので、その点は安心だ) 用件を済ますとすぐに切った。 どうせお袋のことだから、その後も電話口でブツブツ言ってるに違いない。 その後、バックパックを軽くしたかったので国際郵便局に寄って、旅の途中で買った本をまとめて船便で日本に送った。 警察署にも寄って、昨晩の盗難調書とは別の盗難証明書を2通つくってもらった。 最後にもう一度領事館に寄って、領事にお礼を言った。 その間中、あの女と赤ん坊を乗せた乳母車も一緒で、おかげですべての場所はすぐにわかった。 3時頃にはバルセロナでやるべきことはすべて終わった。 あとは夜行でマドリードに向かうだけだ。(幸いなことに、ユーレールパスは革ジャンの胸のポケットに入っていたので盗まれなかった) トイレで残りのペセタを勘定し、今晩の食事代とわずかな金を残して残りは女にやった。 そして別れた。 途端に気持ちが晴れ晴れした。 バルセロナの街を散歩した。それから地下鉄でサンツ駅に向かった。 簡単な食事をして、夜8時10分発の列車でマドリードに向かった。 コンパートメントの乗客を注意深く観察したが、パンツ一枚になる可能性は無いなと思った。安心したら疲れがどっと出てきて、やがて深い眠りについた。 かずま
by odysseyofiska4
| 2014-06-15 17:56
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