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2014年 05月 02日
「Odyssey of Iska 1984」 28.マルセイユ ラルブレルからリヨン経由でマルセイユに着いたのは夜6時頃だった。 駅前に妖しいお姉さんが何人か佇んでいる。 さすが港町だなと思った。 こういう、どこか妖しい胡散臭い所があって、乞食や泥棒のいる街でないと人生おもしろいことはない、というのがそろそろ分かりかけてきた。 だが、私がこの街に立ち寄った理由(わけ)は単にコルビュジェのユニテを見るのが目的で、(その後ニースへ行こうと思っていたので、)最初からここは一泊と決めていた。 駅のインファメーションで教えてもらった安ホテルで荷物を下ろすと、ホテルの主人に教えてもらった地元の人が行く生牡蠣の店に直行した。 港からほど近いその店は当たりだった。 まず、石畳がそのまま店の中まで続いている。その通路の両脇に生牡蠣の入った籠がこれでもか!というくらい並んでいる。そこを通り抜けて席に着く。レストランというより市場の中にいる感じだ。生牡蠣とシャブリを頼む。しばらくして鉄の2段の器に載った氷と生牡蠣がたんまり運ばれて来る。そしてそれを口に入れた時の驚き。 しょっぱい!! まるで海を食べているようだ!! そしてシャブリを飲んだ時のさらなる驚き。 ビリビリ来る!! まるで電気だ!! だが、この海と電気の結婚は最高だ!!! やはり食と酒は地元に限る。東京でこの体験はありえない。 次の日は雨だった。 バス停で出会った人にマルセイユのユニテに行きたいと言うと、 「このバスに乗って『ル・コルビュジェ』で降りろ」と言う。 怪訝な顔をしてバスに乗り、しばらくするとその名のバス停に着き、降りると目の前にユニテがあった。 サヴォワ邸に行った時も、確か降りたバス停は「リセ・ル・コルビュジェ」だった。そしてすぐそばの高校の名は「ル・コルビュジェ」だった。 フランスはおもしろい国だ。個人をとても尊重し、その人がやった業績が高く評価されると、通りも、地名も、建物も、バス停も、高校も、皆その人の名で呼ばれる。 日本はその逆で、個人の業績でその人の名が付くことなど滅多にない。 はじめにピロティ下に行く。柱がぶっとくて、縄文時代の女の像を脚元から見上げるような感じだ。荒々しいコンクリートの打ち放しはなかなか迫力がある。 このユニテの工事中('45~'52)に現場を見たヨシザカはさぞかし感銘を受けたことだろう。 中に入る。メゾネット形式でできているので、エレベーターは3階ごとに停まる。通路は暗い。 途中の店舗や郵便局がある共用施設階に行く。この建物が単なる住居の集合体ではなく一つの街として理想郷をつくろうとしたことがひしひしと感じられる。 それをさらに強く感じるのは屋上だ。子供の遊び場やプール、体育館、保育園などがあり、子供達が遊んでいる。 しばらくその場に佇んでいると、客船の甲板にいるような感じがして来る。 たぶんコルビュジェは、この建物を船のメタファーを借りながら設計したのだろう。 外観のカラフルなブリーズ・ソレイユもそうした思いを強くさせる。 コルビュジェが長年考えて来た都市への熱い思いがやっと叶えられたという気持ちがこの建物からは伝わって来る。思いの丈をすべてぶつけている。だから凄く迫力がある。 後期コルビュジェの門出を飾るにふさわしい建物だ。 身体が冷え切ったのでブイヤベースを食べることにした。 港に行き、波止場を歩いていたら、おあつらえ向きの店があった。 中に入って窓辺のテーブルに腰掛け、灰色のハーバーをボーッと見ていたら、一羽のカモメがすぐそばに止まった。そしてじっとこちらを見ている。 お前も淋しいのかい? そう、言われたような気がした。 しばらくしてブイヤベースが出て来た。 熱いスープと海の幸が身体の中に入り、ふたたび生き返って行く。 ふと見ると、カモメはもういない。 その後もいろんな所でカモメと出会った。 もしかしたら、あのカモメが私とずっと一緒に旅してくれたのかもしれない。 かずま
by odysseyofiska4
| 2014-05-02 21:17
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