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2012年 10月 13日
「Odyssey of Iska 1984」 17.イスタンブール(1) ミコノスからアテネに戻るとすぐに旅行会社に行って、イスタンブール行きのバスのチケットを買った。そしてバスに乗り、丸一日かけてイスタンブールに着いた。 途中、国境でバスから全員降ろされ、荷物とパスポートのチェックを受けた。 結構時間をかけて一人一人チェックするので少し不安になったが、私だけはあっという間に終わった。そしてまたバスに乗った。 トルコに入ると景色が変わった。各村々には必ず特徴的なミナレット(尖塔)のあるモスクがあり、アザーン(礼拝時刻を知らせる独特の音楽)がどこでも流れていた。 とてもエキゾチックな感じがした。 それはイスタンブールに着くと最高潮に達した。 それまでのヨーロッパの風景とはまるで違っていた。 私はアリババの末裔達の国に来たような気がした。 時刻は夕刻だったのでインフォメーションで紹介されたホテルにタクシーで行った。さすがに着いたばかりで見知らぬイスタンブールの薄暗がりの街を歩いて行くのは危険だった。 ガラタ塔のすぐそばにあるホテルは少し胡散臭い感じで、チェックインすると、薄ら笑いするホテルの男から大きな鍵を渡された。 ガチャガチャ苦労してようやく部屋に入り、一日バスで揺られたので疲れを取ろうと風呂場でバスタブを見ると、底に栓が無い。電話をかけると「ああ、これか」という感じで黒いゴムを渡された。それを詰め、たっぷりお湯の入ったバスタブにつかりながら考えた、というか、直感した。 明日、ホテルを替えよう なかなか年代物の部屋だ。別にそれが嫌いというわけではないが、何かを置いておくと魔法のランプで消えてしまうかもしれない。そうなった時に私は私にいいわけをしたくない。ただそれだけの理由だ。 翌朝、日本大使館に行った。ブルガリアの国境を抜けるためにはビザが必要だったからだ。(日本で申請したら時間がかかると言われ、それなら現地で取ろうと思った) 日本人のTさんに出会った。Tさんにビザの話をすると、 「私が知り合いに頼んであげるから2、3日で降りるだろう」と言った。おまけに、 「そんなホテルはやめないさい。もっと安くてあなたに向いた所がある」と言われた。 目を見れば信頼できる人だということはすぐにわかった。彼女の言う通りにした。 チェックアウトをしにホテルに戻った。近くまで来た時、タクシーが急にスピードを上げてグルッと遠回りし、キキーッと玄関先に着けた。 「やられた!」とTさんが叫んだ。 「ここのタクシーはいつもこうなんだ」 その後、彼女の勧めるバックパッカーの溜まり場のゲストハウス(簡易宿泊所)に行った。 値段は1/3くらいになり、気安い仲間がいっぱいいて、 「どこから来たんだ? ヘ〜、ジャパニーズか?! お前みたいなのは珍しいな!」 と気さくに皆話しかけて来る。 とりあえず1週間泊まることにした。 Tさんが息子を紹介しようというので、彼のいるキリムの店に行った。 驚いたことに金髪で青い目をしている。そして日本語はペラペラだ。日本人のかわいい女の子を見かけると口から泡を飛ばして熱心にアタックする。 それを見ながら、困った子だという風にTさんがため息をついた。 Tさんは昔ドイツ人と結婚してイスタンブールにやって来たのだが、やがて離婚し、息子と二人でそのままこの地に留まったのだという。 「日本には帰らないのですか?」と聞くと、遠くを見るような目で、 「たぶん、帰らないでしょうね」という。 その横顔は毅然とした美しさの中に淋しさも入り交じって哀感があった。 このキリムの店はとてもおもしろかった。 彼女の息子はもちろんだが、他の売り子も皆口八丁手八丁で、見ていて飽きなかった。 経営者のトルコ人はとても親切で、本物のキリムは燃やしても表面が少し焦げるだけで中は大丈夫なんだと言いながら、本当にライターで火を着け、焦げた部分をサッと手で払って、「どうだ!」という顔をする。 三越のバイヤーがこの前来て、馬鹿みたいに買っていったと言った。確かにクオリティーは高いのに値段は驚く程安い。日本に行ったらきっと10倍くらいの値になるのだろう。 イスタンブールのモスクや街並を毎日探索し終わると、いつのまにかこのキリムの店に足が向いた。本当は一月くらいここでボンヤリしていたかった。 そうすれば小説が書けたかもしれない。 だが、旅はまだ序の口に過ぎなかった。 かずま
by odysseyofiska4
| 2012-10-13 22:16
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