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2010年 09月 22日
「Odyssey of Iska 1984」 5.ローマ(3) 建築のことばかり書くと、まるでそれを見るのが目的でヨーロッパへ行ったように誤解されるが、最初に書いたように、むしろ私は建築を捨てるためにヨーロッパへ旅立った。 大学で学び始めて丁度十年目で、仕事の上でもプライベートでも燃焼したので、もう一度自分を白紙に戻して0から見つめ直したかった。 だから私の旅は毎日の生活をプリミティブに反復し、忘れかけていた身体感覚を一つ一つ呼び戻すことから始まった。 朝起きて歯を磨き、Hと奥さんに「おはよう」を言い、食事をすると、毎日ローマの街へ飛び出していった。王女から解放されてローマの街を楽しんだオードリー・ヘップバーンのように、私もローマを楽しんだ。近郊のカプラローラやチボリにも出かけた。すべてが新鮮に感じられ、おもしろかった。 名所旧跡もおもしろかったが、それ以上におもしろかったのは人間だ。 ほとんど英語は通じなかったが、道を聞くと口から泡を飛ばして教えてくれた。そしてそのほとんどが誤りで、かえって迷子になった。 刻そばをやられたこともある。 ジェラートを食べてお金を払ったら、「ウーノ、ドゥエ、トレ・・」と私の手のひらにおつりの札を渡しながら、「どこから来たんだ?」「ジャパン」「そうか、ジャポネーゼか」と言いながら、「ハイッ」と勢い良く残りを渡して奥へ消えてしまった。 次にお金を払う時に数えてみたら、2000リラ少なかった。 こういうことはよくあった。 だが、私はイタリア人は好きである。 人間が丸出しで、「自転車泥棒」(1948)の頃のままだなと思った。 そう言えば、「自転車泥棒」に出て来たヴィットリオ広場の、人混みでごった返す夕方の市で買って食べたピザは最高においしかった。マッチョなお兄さんの、こうやって食べるんだ、ガバッというオーバーアクションに負けて買ったのだが、新聞紙にくるまれた、100円もしない、あの時の熱々のトマトピザ以上においしいピザにはその後も出会っていない。 小さなガキンチョの女の子(5才くらいか?)に道で呼び止められ、タバコを強請られたのにもびっくりした。持ってないと言うと、とても不機嫌な顔をされた。 さすがに早過ぎるぜ、ベイビー! ところが、その夜、Hのアパートに戻る時に、少しローマを見物しながら戻ろうと思って、いつものテルミニではなく一つ前のレプッブリカで地下鉄を降りて地上に出たら、目の前を凄いグラマーのお姉さんが透け透けの服を着てノッシノッシと歩いていた。びっくりして周りをよく見たら、同じようなお姉さんが2、3人いた。その向こうには怖そうなお兄さんもいて、さらにその向こうにはローマの歴史遺産が立ち並んでいる。まるでフェリーニの映画のようにシュールだ! 夜のローマを初めて観た。 こんな不思議な街だから、あのガキンチョも成長が早いのか?! 街といえば、犬の糞には辟易した。ローマの至る所で散見した。 Hと奥さんが「注意しないと踏む」といつも言うので、「大丈夫、俺はそんなにうっかり者ではない」と威張っていたが、コロッセオのそばで後ずさりしながら写真を撮っていた時、いきなりムニュッとやってしまった。しまった!と思ったが遅かった。 犬のならまだよかったが、観光客用の馬車の落としていった奴をやってしまった。 ブーツを脱いでティッシュで拭き取りながら、自尊心が台無しになって行くのを感じた。 憎き馬め!馬刺しにしてやる!! そんなこんなしながらローマの街を探索していくうちに、原因不明の頭痛が始まった。 なぜだか理由はわからなかったが、通奏低音のようにそれは続いた。 そのうち、何となくわかった。ローマの建物は皆、神のオーダーでできているので、1階や2階の建っ端がやたらに高いのだ。その割に道幅は狭い。だから街を歩いていると、上から覆いかぶさり、押しつぶされるような感覚に陥っていく。 最初はそれに気づかなかったが、だんだんボディーブローのように効いてきて、気づいた時には最終ラウンドのボクサーのようになっていた。 (そろそろ、ローマともお別れした方がいいかもしれない)そう、思った時だった。 ナボナ広場で始まったばかりのカーニヴァルに魅了され、その衣装に身を包んだ子供達の写真を夢中で撮っていたら、それを見ていた老人から、 「本物のカーニヴァルが観たかったら、ヴェネツィアへ行け」と言われた。 途端に私は本物のカーニヴァルが観たくなった。 Hのアパートへ急いで引き返し、荷造りをした。 Hと奥さんに「今夜の夜行でヴェネツィアへ行く」と言って、食事もそそくさに真っ暗な外へ飛び出し、駅へ向かった。 こうして助走期間は終わり、私の本当の放浪の旅が始まった。 かずま
by odysseyofiska4
| 2010-09-22 23:49
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